不眠症とは「夜にうまく寝られないことにより日中の生活に支障をきたしている状態」を言います。夜にうまく寝られていなくても日中に困っていなければ病気とは捉えません。(睡眠障害国際分類(ICSD-3)による診断基準)
夜にうまく寝られない=なかなか寝付けない(入眠困難)・途中で目が覚める(中途覚醒)・朝早くに目が覚める(早朝覚醒)・ぐっすり寝られた気がしない(熟眠感の不足)という症状のことを言います。
これらの症状を起こす原因は不眠症以外にも複数あります。例えば、入眠困難については体内時計が遅寝遅起きにずれてしまった「睡眠相後退障害」やカフェインや喫煙、薬剤の影響などが原因の場合もあります。中途覚醒についてはいびきや歯ぎしり、頻回の足のピクつきといった睡眠中の身体の問題(睡眠妨害事象)やアルコール・薬剤の影響、疼痛や痒み、前立腺肥大症による夜間頻尿、内分泌疾患などの身体疾患も原因として挙げられます。
このためまず初診ではしっかりとお話を伺い、寝られなくなったきっかけやその後の経過などの「うまく寝られない歴史」のほか、合併症や治療薬、寝られないこと以外の症状や心配事の有無など、ミステリーをとく探偵になったつもりで「寝られない状態」についての実態をご一緒に明らかにしていきます。とはいえ眠っている間のことはご自分ではわかりません。このため必要に応じて、睡眠中の状態を確認し治療方針を検討するために関連病院にて睡眠の精密検査(終夜ポリソムノグラフ)を行うケースもあります。
睡眠薬による治療は即効性が期待されるという利点があり、短期的な解決になり得ます。ここ10年間で依存性や転倒リスクの少ない睡眠薬が開発され病院で処方できるようになり、より安全・安心な睡眠薬の選択肢も増えました。一方で、長期的な視点で考えると原因に応じた治療や、生活習慣・睡眠習慣の改善・調整を行うことも健康的な解決につながります。当院では患者様の困りごとやご要望に応えながら、睡眠薬を使う場合、使わない場合いずれにおいても出来るだけ健康的な解決を目指しています。