レム睡眠行動障害は、嫌な夢に関連して眠っている最中に大きな声で叫んだり暴れたりする睡眠障害です。比較的高齢者に多い睡眠障害で、突然の大きな寝言でベッドパートナーを驚かせたり、暴れた際にご本人が怪我をされたりするケースも見受けられます。ご本人は夢を見て眠っているため、寝言や行動について必ずしも覚えているとは限りません。ご家族が心配したために来院されるケースが多い疾患ともいえるでしょう。
レム睡眠行動障害の発症率は男女の差はほとんどありません。症状には男女差が見受けられます。レム睡眠行動障害の症状が目立つのは嫌な夢を見た場合です。例えばクマなどの獰猛な動物に襲われる夢を見た場合、男性は戦ってしまい、夢のなかでクマを蹴飛ばしたつもりの脚が現実では隣で眠っていたパートナーを蹴飛ばしてしまう、ご自身の脚がタンスや壁、窓ガラスに当たってしまいケガをする、というケースが見受けられます。一方で女性は、同じ夢を見た場合にもクマと戦うことはあまりありません。このため女性は男性よりもケガをするケースは少ないのですが、「きゃー、助けて!」という女性の叫び声を聞いた近所の人が110番通報し、実際に警察が来てしまい騒ぎになるケースが見受けられます。
寝言を言ったり動いたりする症状があると即治療が必要かというと、必ずしもそうではありません。治療が必要かどうか、もしくは治療がうまくいっているかどうかの境目は「ご本人がケガの心配なく寝られて、周囲の人が大きな寝言や叫び声で睡眠を邪魔されないかどうか」という点で考えましょう。
レム睡眠行動障害は薬剤治療や生活習慣の改善により症状の改善が得られる疾患です。診断には1泊入院で行う睡眠の精密検査(終夜ポリソムノグラフ)を行います。他の疾患(パーキンソン病やレビー小体型認知症)でもレム睡眠行動障害と類似の症状が出現する疾患があるため、必要に応じて経過観察や鑑別のための別の疾患の精密検査も行います。